日々イエンゴ

全国の会員が日々の相談・検査・設計・研究などの活動から皆さまに役立つ事例、家づくりに関する地域の情報、社会情勢ニュースに対する専門家としての意見などを発信していきます。

樹齢

会津若松 鶴ヶ城の北側入口近くにアドリアと言う喫茶店があります。

そこに飾られている欅の一枚板は幅2.2m厚さ22cm高さ5.4m

樹齢は800余年です。

奈良の室生寺の近くの水分神社の御神木として天然記念物に指定された欅の木が

老化の為倒壊の恐れがあるとし、天然記念物を外し伐採されたそうです。

長さ2mもあるチェーンソーにより現場で2枚の板を切り出し入札により販売し、

倒木の費用にしたそうです。樹齢800余年と言うと弘法大師空海がおられた時代です。

もしかしたらこの木の下で空海も休まれたのかもしれないと思うとロマンを感じます。


名古屋城本丸御殿のある床の間の板は幅90cmの桑の一枚板です。

樹齢500年以上の桑の木、直径は1.2m以上でした。


とんでもない樹齢の木材がある一方、住宅に使われる木材は年々樹齢が下がってきています。

桧は50年、杉は50~60年が一般的になっています。

使われる木材がある一方で、その周りには手入れがされなかった為に使えない木材が

日本の山に有り余っています。山の1区画には一斉に植林されます。

その1区画が50年を経て成長すると南側の日当たりの良い場所の木と

北側の日の当たらない場所の木では成長に差が出ます。

直径は育ちが良ければ50cm悪ければ15cm程度。そのどれもが樹齢50年なのです。



奈良の北山では台杉と言うタルキ用の木材を生産しています。

台杉は通常3本セットで最上部の枝を残し全ての枝を切り落とし

60年をかけて直径10cm以下になるように木材を作っています。

かつては社寺仏閣や茶室のタルキの材料として重宝されましたが

需要が無くなり生産量は格段に減ってしまいました。


今、日本のウイスキーが有名になり各地にウイスキー醸造所が作られています。

そこで必要になるのがウイスキーを貯蔵熟成する樽です。

樽の材料はナラ材です。日本中でミズナラの争奪戦が始まっています。

ミズナラは広葉樹で雑木と言われています。

約20年で伐採が可能ですがあまり植林はされていません。

熊の被害が増える原因の一つがミズナラの身であるどんぐりの減少です。

ミズナラの減少は熊の被害と結びついているのかもしれません。


この頃少しずつ、山に活気が出てきている気がします。

それぞれの樹木に適正な樹齢がありうまく利用する事が大事です。

山の価値が復活し、山の仕事で生活ができるようになれば

日本の経済も変わるだろうと考えています。


東北:関 清


桐のフローリング

 桐材と言えば箪笥を思い浮かべると思います。


 高級家具ですね。


 昔は下駄やまな板と言った生活用品にたくさん使われていました。

植えてから15年から20年で成木となるので、

女の子が生まれると庭に苗を植え、その桐材で嫁入りダンスを作ったと言う話を聞きました。


 その桐材を使ったフローリングがあります。

やわらかい木ですので傷がつきやすいのですが、

そのやわらかさが肌に心地よく転んでもケガをしにくいのが特徴です。


 比重0.28~0.3と軽い素材は空気をたくさん含んでいて断熱性に優れています。

他のフローリングに比べ暖かく感じます。

素足で生活するのに適しています。

桐材は傷つきやすいのですが復元力があり、

水を含ませアイロンをかけることで修復できます。

値段は安くはありませんが面白い素材だと思います。


 桐材の産地は多々ありますがその一つに新潟の五泉があります。

昔は需要があったので山も手入れがされていてたくさん生産されていたようです。

今は家具としての需要も減り、山に手を入れる余裕もなく、

用材としてはほとんど使えないようです。


 そこで中国の人件費が安かった頃、中国で植林をして桐材の生産を始めました。

桐材にはアクがあってアク抜きをしなければならないのですが、

それも中国で丁寧に指導して良質の桐材の生産ができるようになりました。

ところが、中国の人件費が上がってしまって、

日本の企業が経営することはできなくなったようです。

今はただ単に製品を中国から輸入しています。


 日本の人件費が安くなってしまった今、

山の再生ができる時代になったのではないのかなと思うのです。

桐のフローリングや家具の需要が増え、

いつの日かまた五泉の山で桐の生産ができるようになるのを願っています

東北:関 清


25年前に建てた友人の家

 先日久しぶりに友人宅へ伺いました。
 
 その友人は子供のころから畳の上で育ってきたので畳以外の上での生活は考えられないと言って全室和室の家を建てたのです。


 奥様も同じような環境で育ったらしくお二人の意見は一致していました。

 その当時でも、もう和室だけの家を建てる人はほとんどいなくなっていました。

 25年の歳月が経っているのに数年しか経っていないようなきれいな状態を保っていました。

 日頃の手入れが良いのかと思ったのですが、共働きで手入れもしていないとの事。

 ただ畳は表替えをしたそうです。


 考えてみると、当時の棟梁が久しぶりに和風の家を手掛ける事に情熱を燃やしていたのを思い出しました。

 和室を作るには大工の技術がそのまま反映します。

 長押や鴨居、廻り縁と言った横物に寸分の隙間なく納まっていました。

 たぶんそう言うところが建物を若く見せているのでしょう。

 和室がどんどん減って大工の技術も受け継がれなくなる事はしょうがない事なのでしょう。

 宮大工、数寄屋大工と並んで家大工がいてそれぞれの技術があります。

 今も専用分野でその技術を持った人達はいます。

 ただ、その技術は今の住宅にはかならずしも必要でなくなったのかもしれません。

 現在の住宅の老化が早いのは求められなくなった大工の技術にも一因があるのかなと考えさせられる訪問でした。

東北:関 清


建替えの予算組にご注意

 今の住まいが古くなり建て替えをする、また、中古住宅を購入して解体してから新築を建てる、など自分たちの希望を入れて家を建てることは夢の一大事業です。



 新築住宅を購入するのと大きく違うのは、まずは古い家を解体しなければならないことです。



 建て替えなどの場合、家づくりの予算を考える時に解体工事費も含めて考えなければならないのですが、2023年10月の法改正により解体費用が大きく増えることになりました。

 テレビなどでも耳にしたことがあると思いますが、人体に悪影響を及ぼす「アスベスト」に対する法規制が厳しくなり、調査から届出、処分まで、非常に多くの手間と費用がかかることになりました。



 規制前には様々な建材に含まれていた「アスベスト」ですが、人体に影響があることが解ってきていからは建材への使用が禁止されたため、新しく使われる建材には含有されていることはありません。

 しかし、古い家には「アスベスト」含有の建材が使われているので、どこに含まれていて、どのように処分するのか、事前に届出する必要があります。

 解体工事をするときにも、「アスベスト」含有の建材を壊す時には今までのように機械を使えず、手で撤去のうえ袋詰めして、周りに飛散しないように運び出さなければならない、これを聞いただけでも余計な費用が掛かることが解ると思います。

 
 調査をしなければどれだけ使われているか解らず、費用もはっきり出来ない、だけど調査するためには屋根や壁を壊してサンプルを調査会社に提出しないと解らない、など、住んでいる状態では費用が出てこないという状況になります。


 国が決めた流れでは、全体工事費を決めてから家づくりをはじめることが難しいことになってしまいました。

 解体費用には、少し余裕を持って計画することが必要であることを忘れず、予算組にはご注意ください。


理事長:植田 達二


省エネ法改正について

 建築物省エネ法改正で、現在特定の建築物だけに限定されている

省エネ基準の適合義務が令和7年の施行後、

全ての新築の住宅が省エネ基準の適合義務の対象になります。




 増改築の場合にも省エネの適合義務が見直される予定です。


 省エネ性能を高めた住宅では、太陽光パネル、断熱材、サッシなどの採用などにより

住宅の建物としての重量が増してきます。


 このことより令和7年から構造の基準も変わります。



 省エネ、構造基準の改正などにより、家づくりも様々な基準に適合させるために

設計だけでなく施工中の管理も非常に大事になってきます。



 家づくり援護会は、家づくりを確実にサポートします。

 家づくり援護会を活用して たしかな家づくりをしてほしいと思います。

北海道:今井 正樹