技術を磨く場の減少
工場生産での大量生産は、良質なものを安価に求めることのできる社会を実現させ、それにより人々の生活は飛躍的に便利になりました。
住宅産業で言えば、工場生産パーツで組み立てる家づくりの一部がそうかもしれません。
材料は繊維板や成型板などの人工建材(=新建材)を使うため、収縮やねじれがなく加工が容易で、施工時間も従来より大幅短縮は出来ます。
しかし建主さんが材料に天然無垢材を使用したい、壁は塗り壁にしたい、建具や家具を特注で造りたい、本格和室も欲しいなどと思われたら、新建材を多用する一部の住宅では対応が困難な可能性があると思います。
そういった依頼にも対応できる職人さんの存在が必要です。
良い素材材料を用いて設計されても、それを形にする大工さんの腕技術が低くければ、見た目で粗が目立つでしょうし、耐久性も落ちてしまいます。
例えば無垢の木は、性質による収縮やねじれも考慮しながら加工をしなければなりませんので、性質を見抜く目も必要でしょう。
今は大工さんの人口自体が減少している現状です。併せて、新建材を多用する住宅の需要増加を踏まえると、その希少な大工さんが技術を磨く場も減少していると思います。
巾木(はばき)の出入り隅の造り方を見ても、樹脂製のキャップを両面テープで留めて仕上げている住宅と、材を45°斜めに切ってピタッと角を造り仕上げているのでは、見た目の気持ち良さと耐久性が違います。
関東:石川 克茂