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 家を建てる前に読む本 家づくり援護会[編]          もくじ第1章第2章第3章第4章第5章第6章第7章

第2章 業者選びで決まる家づくり @

第2章 業者選びで決まる家づくり

業者選びの難しさ
業者選びの難しさ
大手メーカーなら安心?
住宅展示場の利用法
契約をあせる業者は要注意

業者選び10のポイント
1 地の利を考える
2 元請けが望ましい
3 10年以上の事業実績を持っている
4 経営状態を知る
5 仕事場を見る
6 「有名だから」で選ばない
7 見積競争で選ばない
8 第三者支援に対する態度
9 保証、保険加入のチェック
10 早い時期に専門家に相談する

オンラインセミナーとの相違点
1.詳しい図版が20ページ以上!
2.最新の法改正などに対応済み!
3.付録として推薦施工業者一覧!

業者選びの難しさ

業者選びの難しさ

 家づくりを誰に託すか−私たちの行っている「家づくり相談会」の中でもっとも多い質問です。しかし、この施工業者選びは私たち専門家にとっても難しく、まして家づくりの経験も少ない一般の人にとっては、雲をつかむような難題であることは容易に理解できます。とくに最近のように、施工業界の系列化や分業化が進み、さらに工法が多様化した状況にあってはなおさらです。
1960年代の半ばころまでは、どこの町や村にも腕のいい棟 梁 たちがいて、その地域の人たちは迷わず彼らに家づくりを託すことができました。施主は棟梁に口約束で家づくりをまかせ、棟梁は末代までその家を守ることを前提に仕事をしたものです。しかし、この関係は60年代後半に入ると崩れ始めます。経済政策の一つとして打ち出された持ち家制度を契機に、住宅建設に関する技術革新、流通革新が飛躍的に進み、昔気質の工法や施工技術では経済ベースに乗らないという背景も加わり、棟梁に代わってハウスメーカーが家づくりの主役になりました。しかし、施主の側にすれば、家づくりを託す相手を自らの判断と責任で選ばなければならないという難しい状況に立たされたことになります。
現代における業者選びの難しさは、かつてのように顔が見え、技量もわかり、評価も定まっていた棟梁という存在に代わり、つかみどころのない企業という存在を相手にしなければならないところにあります。どんなに宣伝広告で訴え、販売員が力説しても、それを鵜呑みにし、信じ込むことなどできるものではありません。建てる側にとっては身代をかけた事業ですから、警戒するのは当然です。
私たちは施工業者選びの基準として、後ほど見るように、いくつかのチェックポイントにまとめてみました。難しい業者選びですが、客観的に評価を加えることで見えにくい相手も次第に見えてきます。それでもわからないことや不安なことがあるときには、是非とも信頼できる専門家に相談してください。



大手メーカーなら安心?

先ごろ、テレビの記者会見で石原東京都知事が興味のある発言をしていました。住宅取得に対する負担の問題を取り上げた際に、大手ハウスメーカーの住宅建設費が一般メーカーと比較して高いという現象を取り上げ、東京都内の中小住宅建設業者に対する補助育成策を強化したいという主旨の発言でした。

大手ハウスメーカーの建設費が中小ハウスメーカーに比べ高いというのは半ば常識化していますが、石原知事の発言はこうした状態を批判し、大手ハウスメーカーに対する改善措置を要求すると同時に、要求してもたぶん聞き入れられないことを見越して、中小メーカーの育成策を打ち出したものと思われます。
大手ハウスメーカーが聞き入れないだろうと予想されるのは、経営を継続するためには現在の価格体系を維持する必要性があるからです。大手ハウスメーカーの経営は分業化によって経営の合理化を計っているものの、莫大な需要を常時確保する必要から巨額の宣伝費と販売経費が不可欠となっています。また、自社で施工するのではなく系列の工務店に下請けに出すというシステムのため、これらに対する管理費、教育費、利益供与なども決して小さくはありません。メーカー側は建築資材の大量一括仕入れによるコストダウンを主張しますが、莫大な間接経費の前にコストダウンの効果は需要者に反映されないというのが実情です。

たしかに大手ハウスメーカーの技術力やデザイン力を評価する声もありますが、北海道や東北地方などの自然環境の厳しい地方では、全国共通仕様の家づくりが独特の気候風土に耐えられず、欠陥住宅として問題を起こしている例もあります。風水思想ではありませんが、住まいの原点は気候風土との調和、共生であると考えれば、やはり地域の環境風土に根ざした家づくりが基本といえます。南洋の高床住宅も、モンゴルのゲル(パオ)もその意味で理にかなった家づくりといえるわけで、デザインや技術力はそれぞれの地域環境の中で活かされてこそ、機能的で美しいものとなるのです。地域の特性や環境を無視したワンパターンの文化は、家づくりにおいても決して歓迎すべきものではありません。地域に根ざした良心的な施工業者を地域ぐるみで育成し、気候風土に適した独特の技術とデザインが生まれることが豊かな家づくり文化を育てていくと考えています。

業者選びに窮した挙句、「大手なら安心」と安易に決める人も多いようですが、本書を読み進む過程で、その判断が正しいかどうか考え直してみてはいかがでしょうか 。



住宅展示場の利用法  

業者選びの場所としてよく利用されるのが住宅展示場です。しかし、この住宅展示場は、実際に家を建てようとしている人が施工業者を選ぶ場所としては、さほど便利にはできていません。住宅展示場では限られたハウスメーカーのモデルしか見ることができず、また、出展するためには出展費用、維持管理費用、集客費用などを含めて年間一億円前後の費用が必要なため、中小工務店や地元の零細工務店は出展できないという問題もあります。出展業者は大手のハウスメーカーばかりで、地域に根ざす優良業者を探したくても探すことはできないのです。

  展示方法についても問題があります。各メーカーは自社商品をアピールするため自慢の工法による最高仕様の住宅を展示し、また、モデルハウスは普通70坪前後ですが、これは平均的な住宅の倍の面積です。これが来場者のイメージを狂わす原因となっています。出展者としては、出展している物件を実際に販売することよりも、企業の技術力、デザイン力をアピールして自社ブランドを選択してもらうことに主眼を置いているので、本当に家を建てたいと思っている人の要望とはかなりのズレがあるのです。
  また、来場者は住宅を比較検討するために住宅展示場を利用したいのですが、その点に対してもきわめて不親切です。出展者間の不平等を避けるという大義名分で、出展住宅を比較検討できる資料を一切提示していません。また、来場者の要求に応じて専門的な立場から商品比較をしてくれるガイドも置いていないので、出展住宅について具体的に知ろうと思えば、展示住宅の中で待ち構えている販売会社のセールス担当者に聞くしかありません。展示されている住宅を見比べ、いろいろ知りたいと望んでいる人にとっては、実に不親切といわざるをえません。

  ちなみに、ある有名な新聞社が経営している総合住宅展示場を例に挙げると、19社が各1棟ずつ19棟のモデルハウスが展示されていて、そのうち在来工法が四棟、2×4工法が四棟、2×6工法が2棟、残り9棟はすべて各社の独自工法となっています(工法については132頁参照)。比較資料を持たない来場者がそれぞれの工法の特徴を理解し、比較し、12種類の工法の中から自分の要求にもっとも適したものを選ぶことは不可能に近いことです。専門家である私たちですら、このような環境のなかで施工業者の優劣を見極め、選ぶことなどできないのですから。

  モデルハウスに待機する販売員の説明も、自社の工法がいかに優れているかをあらゆるデータを示して説明するばかりです。工法に限らず一事が万事この調子ですから、来場者は比較もできず混乱するばかりです。挙句の果てに販売員から夜討ち朝駆けのセールス攻勢を受けたのではたまったものではありません。最近、住宅展示場への来場者が激減しているというのも、こうした住宅展示場の実態を知れば当然といえます。どうやら、業者選びの場所として住宅展示場を活用するのはあまり賢い方法とはいえないようです。ただし、家づくりの情報源として利用するのであれば、立派な資料を無料で入手でき、デザインや設備も最新の参考事例が集まっているので参考になります。間取りや部屋のつくり方についても多くのヒントがありますから、家づくりの教室としてはとても便利なところです。契約を焦る業者は要注意

ハウスメーカー間の顧客獲得競争の激化は、施工請負契約のあり方にも大きな影響を与えています。契約に関しての社会通念としては、契約締結時点ではすべての取引条件が明確にされ、当事者がそれを納得しなければ署名捺印することはありません。契約時に契約内容が決まっていないなど普通では考えられないことです。

  家づくりにおいても、最終的な実施設計図面が完成し、それにともなう仕様、積算が決まり、工期および施工スケジュールが確定し、検査、保証、アフターケアの内容などを明確にしなければ施工請負契約を締結することなどできないはずです。もし仮に、これらの請負条件を未確定にしたまま契約締結したとなると、施主、施工者いずれも大きなリスクを覚悟しなければなりません。
  しかし、実態はこうしたきわめて危うい不確定契約が横行しています。このため、先に紹介したようなトラブルが日常的に起こっていて、当事者のいずれかが多大な損害を被っています。
  なぜ、リスクが大きいのを省みずこのような不確定契約が横行するのでしょう。当事者双方に責任はあるものの、やはり業者側の責任がより大きいといっていいと思います。契約をぐずぐずしていると他社に顧客を奪われるという業者の恐怖感が、リスクを覚悟の冒険的契約に走らせているのです。

 とくに中小のハウスメーカーがこうした冒険的な契約に追い込まれるのは、大手ハウスメーカーとの競争が引き金になっていると思われます。商品ラインナップが整い、いつでも契約できる態勢にある大手ハウスメーカーに比べ、独自の設計施工を売り物に注文生産する中小施工業者は契約ごとに設計、仕様、積算をしなければなりません。中小業者にとってこれは費用の面でもマンパワーの点でも負担が大きく、もし万一契約を逃がした場合の損失を考えると、多少のリスクは覚悟しても契約せざるをえないという事情があります。また、施主側にも一日も早く自分の家を建てたいという心の焦りがあるため、条件が確定しないうちに、担当者の言葉を鵜呑みにしてハンコを押してしまうといった軽率さがあるのも事実です。

 しかし、施主、施工者両者にとって契約を焦ることによって得られるメリットは少ないのです。むしろ、優れた技術や人材を抱え、大手ハウスメーカーではできない地域密着型の家づくりをしている中小の施工業者が、大手と伍していけるような契約環境の整備こそ緊急の課題ではないでしょうか。



契約を焦る業者は要注意

ハウスメーカー間の顧客獲得競争の激化は、施工請負契約のあり方にも大きな影響を与えています。契約に関しての社会通念としては、契約締結時点ではすべての取引条件が明確にされ、当事者がそれを納得しなければ署名捺印することはありません。契約時に契約内容が決まっていないなど普通では考えられないことです。

  家づくりにおいても、最終的な実施設計図面が完成し、それにともなう仕様、積算が決まり、工期および施工スケジュールが確定し、検査、保証、アフターケアの内容などを明確にしなければ施工請負契約を締結することなどできないはずです。もし仮に、これらの請負条件を未確定にしたまま契約締結したとなると、施主、施工者いずれも大きなリスクを覚悟しなければなりません。
  しかし、実態はこうしたきわめて危うい不確定契約が横行しています。このため、先に紹介したようなトラブルが日常的に起こっていて、当事者のいずれかが多大な損害を被っています。
  なぜ、リスクが大きいのを省みずこのような不確定契約が横行するのでしょう。当事者双方に責任はあるものの、やはり業者側の責任がより大きいといっていいと思います。契約をぐずぐずしていると他社に顧客を奪われるという業者の恐怖感が、リスクを覚悟の冒険的契約に走らせているのです。

 とくに中小のハウスメーカーがこうした冒険的な契約に追い込まれるのは、大手ハウスメーカーとの競争が引き金になっていると思われます。商品ラインナップが整い、いつでも契約できる態勢にある大手ハウスメーカーに比べ、独自の設計施工を売り物に注文生産する中小施工業者は契約ごとに設計、仕様、積算をしなければなりません。中小業者にとってこれは費用の面でもマンパワーの点でも負担が大きく、もし万一契約を逃がした場合の損失を考えると、


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