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 家を建てる前に読む本 家づくり援護会[編]          もくじ第1章第2章第3章第4章第5章第6章第7章

第3章 第三者機関参加の家づくりを提案します A

第3章 第三者機関参加の家づくりを提案します
家づくり環境の変質
無理な契約、無茶な工事が急増
あの手この手の家づくり商法

より公正な施工請負契約のために
ずさん契約はトラブルのもと
業者に都合のいい契約書
業者によってまちまちな契約書
より公正な契約のために
イエンゴ施工請負契約書
あるべき契約のあり方

第三者による施工検査のすすめ
チェックの甘い社内検査
穴だらけの公的検査
大手メーカーに都合の良い
住宅性能評
第三者検査はこれからの流れ

オンラインセミナーとの相違点
1.詳しい図版が20ページ以上!
2.最新の法改正などに対応済み!
3.付録として推薦施工業者一覧!

より公正な施工請負契約のために

ずさんな契約はトラブルのもと

 外国の人たちと仕事をする場合、彼らはまず最初に契約ありきで、その分、契約を遵 守する気持ちも強く、契約違反に対する制裁も厳しいものがあります。これに比較し、国際化が進み、契約社会を迎えた現代においても、日本人の契約に対する認識は非常にあいまいで、契約文書よりも取引先の人間を信用してしまうといった傾向がまだまだ強いようです。このような状態のままでは、家づくりに限らず、契約を軽視し大きな苦しみを背負い込む人は今後も後を絶たないでしょう。

 現代の家づくりにおいて、施主と施工者の関係は契約を基本として確認され、両者の権利義務関係は契約以上でも契約以下でもないというのが現実です。営業担当者や、会社の責任者の誠実そうな態度や、おいしい言葉を鵜呑みにして、契約書を熟読吟味せず署名捺印してしまい、後日トラブルの種になるというケースが大変多いのです。契約の責任は双方五分ですから、甘言に乗せられ軽率にハンコを押した施主側の責任も問われてしかるべきという厳しい見方があることも事実です。

 ずさんな契約によって引き起こされる典型的なトラブル事例について一、二紹介します。

 「契約後、こちらに相談もなく契約時よりグレードアップしたという理由で契約に明記されていない箇所の金額を上げてきたのだが、断れば手抜き工事をされそうで怖い。どうしたらよいか。また、室内足場の設置費を追加で請求して来たが、こういう基本的なことは施工費に含むのが常識と思うのだが、間違っているだろうか」(東京世田谷区の男性)

 実際の工事費用が契約の金額をはるかにオーバーするという事例は非常に多く起こっています。これは簡単な平面図、立面図をもとに細部の仕様を決めずに概略の積算で工事金額を仮に決め契約してしまうために起こるトラブルです。契約当初2000万円だった工事費が実施設計を積算してみたら2700万円になってしまったというような事例は数多く報告されています。安い工事費を提示して顧客の関心を引き、設計を具体化するにしたがって工事費を引き上げていくといった作戦は、一部施工業者の常套手段といってもいいほど、この手のトラブルは最近増えています。

 この場合、きちんとした設計仕様の提示を求めず契約してしまった施主側の責任も大きく、契約破棄すれば違約金を取られることとなり、泣く泣く追加資金を調達して契約を継続せざるをえないという状況に追い込まれるケースが多いようです。

 また、現在住んでいる賃貸アパートの契約期限や、社宅の立ち退き期限にあわせて施工請負契約を結んだのに、引き渡しは遅れ、挙句の果てに延滞金をもらえずに損害と精神的打撃をこうむったというパターンも多くあります。

 私たちに寄せられた相談の中では、「妻の出産にあわせ引き渡しを受ける契約だったのに、竣工前の内覧で30カ所の補修箇所が出て、引き渡しは二カ月以上延びてしまった。契約書には延滞料や、延滞時の損害賠償について明確にされていなかったのですが、当方の受けた損害は精神的にも大きく、どうすればよいか教えてください」(東京葛飾区の男性)というものがありました。この場合の施工請負契約書には遅延に関する取り決めはなく、「絶対大丈夫」という営業マンの言葉を信じて契約を結んだということですが、まさに「後悔先に建たず」の典型例です。

 施工請負契約書では施工金額と同時に施工期間を明示することになっていますが、竣工引き渡しに対する遅延事由や延滞した場合の罰則規定については、契約約款で触れることになっています。しかし、契約約款を添付しない契約、あるいはきわめてずさんな契約約款による契約など、遅延理由の詳細や、延滞料について明示していないものも多く、竣工引き渡しが遅れても、遅延料や慰謝料を取るのはなかなか難しいのが実情です。



施工業者に都合のよい契約書

 近年、住宅需要は減少傾向に入り、企業間の生き残りをかけた競争の激しさは想像を絶するものがあります。このような状況の中、企業間の顧客獲得競争はエスカレートする一方で、無理な契約、無茶な工事が急増していて、家づくりにかかわる訴訟件数もうなぎのぼりに増えています。先にも述べましたが、東京、大阪の両地裁には家づくりにかかわるトラブルを裁く専門セクションができ、訴訟件数の多さから裁判期間も二、三年と長期にわたるケースが多く、施主、施工者いずれにとっても悲劇的な状況です。さらに、このような状況が表面化するにしたがって施主と施工者間の不信感は深まり、些細なことが原因で訴訟に持ち込まれる傾向が強まるのではないかと不安視する人も多いようです。

 現に、私たちのところへも、契約をめぐる相談事が持ち込まれています。たとえば、「現在大手のハウスメーカーと契約交渉中なのですが、月末までに契約すれば値引きすると強引に契約を迫られ困っています。まだ設計も決まっていない段階で、信用してまかせろといわれているのですが、不安で不安で眠れない日が続いています」(埼玉県の主婦)といった具合です。

 なぜこのようなトラブルが起こるのでしょうか。トラブルの起こった事例の施工請負契約書を見ると、これがきわめてずさんで、業者にばかり都合のいい契約内容になっていて、これではいざ裁判に持ち込んだとしても、施主にはまず勝ち目がありません。なぜこんな契約をしたのかと訊いても、「業者を信用していたから」とか「担当営業マンがよさそうな人だったから」と、相手を信用し契約内容を吟味しないでハンコを押してしまったという言葉が返ってきます。

 現在、住宅施工を行う場合、施主(甲)と施工業者(乙)の間で施工請負契約なるものを取り交わすことになっていますが、これは契約書と契約約款の二つからなっていて、契約書では施工内容、施工金額、竣工期日、支払い方法などが明記されています。施工にかかわる約束事は約款に記載されていますが、この約款が業者によってまちまちで統一されたものがありません。契約書の作成を当事者の一方である施工業者が行っているという点に不平等を感じる人も多いと思いますが、実際、各ハウスメーカーの約款を見ると企業側に都合のいい条文になっているのが普通です。しかし、一般の人が自分で契約約款を作るということは至難の業で、また、専門の弁護士に依頼するとなると費用もかかり、結局、施工業者の差し出す契約書によっているというのが実情です。


業者によってまちまちな契約書

 私たちがパッケージ旅行を申し込む場合、旅程および旅行期間中のサービスの詳細、およびその対価と旅行約款を示して契約を結ぶことが旅行代理店に義務付けられています。これは、観光旅行の普及にともない悪質業者によるインチキ商法の防止、旅行者の安全を守ることを目的に旅行代理業法という法律によって決められています 

 住宅建設に関係する施工請負契約については、建設業法という法律の第三章で「建設工事の請負契約」および「建設工事の請負契約に関する紛争の処理」の二項、25条の中で触れられています。この法律は住宅建設に限定したものではなく、建設一般を対象にした法律であるため、住宅建設請負契約については、この法律の精神を尊重する建前で、施工業者各社それぞれに契約文書を作成して注文者との間で契約を交わすという形を取っています。

 このため、施工業者各社の施工請負契約書は千差万別で、定型といったものがありません。「家づくり援護会」では、20社を超える施工業者から現在使用している施工請負契約書を取り寄せ比較検討してみましたが、同じ内容のものは一つとしてなく、各社思い思いの自社製契約書によって注文者との契約を行っている実態が明らかになりました。これは旅行代理業者が同一形式、同一内容の契約形態をとっているのに比べ、際立った特徴といえます。

 契約にかかわるトラブルが多発している現在、住宅建設に関する施工請負契約についての法的な整備を急がなければならないのは当然ですが、一方で、この不十分な契約環境の中でトラブルに巻き込まれないためには、注文者である施主自らが契約の重要性を認め、注意を払うことが大事です。自分に限って大丈夫と油断をすると、営業マンの甘言にはまって簡単にハンコを押してしまうことになります。年収の6年分以上の大金を払って行う家づくりです。くれぐれも慎重を期し、石橋を叩いても渡らないというくらいの用心深さがあってしかるべきではないでしょうか。

 ここで、契約書にハンコを押す前に確認し、当事者間で承認し合う事項について整理してみましょう。

(イ)住宅の設計図面、仕様、予算については実施計画に基づき合意をする。
(ロ)施工の監理、検査など、工事ミスを防止する項目について具体的に決める。
(ハ)工事中、竣工後の事故、損害についての補償について具体的に決める。
(ニ)工期遅延の場合の損害補償、および遅延事由の範囲について具体的に決める。
(ホ)引き渡し後の瑕疵保証、アフターケアについて具体的に決める。

 少なくともこれらの各事項について納得できない限り、契約書にハンコを押すべきではありません。しかし、各項目について一般の人が正しく判断し、プロである施工業者と交渉をするのは、難しいことに違いありません。私たち「家づくり援護会」では、公正な契約にもとづく家づくりを推進するために、家を建てたい人のための施工請負契約を支援する事業として第三者契約の普及を推奨しています。以下、その概要を紹介します。



より公正な契約のために

 たとえば、旅行、生命保険、損害保険なども企業側が作成した契約書類によって契約を行うのが普通ですから、家づくりについても施工業者が作成した契約書類によって施工請負契約を結ぶことに不審を感じる人は少ないと思います。

 しかし、先にも述べたように、施工請負契約は旅行や保険の契約と異なり、施工業者の自由裁量で契約文書の作成をできるようになっています。そのため、契約書の内容は業者によって千差万別で、また、建設業法で定められている事項について触れられていない契約書も多く見られます。つい最近まで、契約を交わさずに家づくりが行われていた時代の名残かもしれません。施工請負契約についての認識は、施主、施工者ともに信じられないほどの低さです。

 しかし、契約に対するこのような認識の低さあるいは無知といってもいいのですが は、家づくりにともなうトラブルの温床になっていることも事実です。旅行や保険のように、法律の枠組みの中で一定の契約約款にもとづく全国統一様式が作られることが望ましいのですが、施工業者間の経営格差もはなはだしく、規格、工法もまちまちなところから、画一的な契約文書で全国統一することはたいへん難しいように思われます。

 そのうえ書式、約款の作成が施工業者の自由裁量に委ねられるとなると、契約の公正を保つことはきわめて困難です。施工請負契約はどうしても業者側に都合よくならざるをえません。法律の専門家に訊いてもトラブルが起こった場合、施主側が対抗しにくい内容になっている場合が多いといいます。契約書を作成する当人が本人の不利になる契約書を作るわけはなく、その意味で、施工業者の自由裁量にまかされている現在の施工請負契約書および約款の多くは、第三者の目で見て公正さに欠けています。

 現代の家づくりが契約の上に成り立っている現状では、契約関係が公正でない限り施主と施工者の関係も平等を保つのは難しいといわざるをえません。当事者のどちらか一方に有利な契約など、あってはいけないことです。

 私たちが推進しようとしている契約サポート事業は、施主と施工業者の平等・公正な施工契約の実現を目指しています。単に公正な契約文書の普及を目的としたものではなく、家づくりの条件となる設計、仕様、検査、保証、情報管理等について専門技術者の立場からアドバイスし、施主と施工者が共通の理解をもって家づくりに臨めるような環境作りを目的としています。

 この契約サポート事業は中小施工業者にとってもメリットが多いと考えています。不確定な段階での契約は施工業者にとっても大きなリスクであり、理不尽な施主の横暴を避ける意味からも第三者を交えた公正な契約の実施は利益をもたらすこととなるはずです。



イエンゴ施工請負契約書

 私たちの契約サポート事業では「イエンゴ施工請負契約書」を用いて施工請負契約を結びます。この契約書式は、1.契約書、2.契約約款、3.細則の三部構成からなっています。契約文書の作成は、住宅関係の訴訟を多く手がけ、家づくりのトラブル解決に活躍している秋野卓生弁護士と、家づくり専門家の合同チームによって制作されたものです(図2)。

 「イエンゴ施工請負契約書」は、注文者(甲)、請負者(乙)のほかに監理者(丙)を明記し、工事監理に対する責任の所在を明確にしている点が特徴です。

 「契約約款」は全二五条からなり、とくに工事完成保証(第七条)、損害保険(第十五条)、瑕疵の担保(第十八条)など、施工の履行と保証に関する約定は施主の安心を担保する上で重要です。また、第三者による施工検査(第十六条)は工事に第三者の目を入れ適正な施工を促進するうえからも有効です。さらに、第十六条で検査結果や住宅建設にかかわる情報を第三者機関に預託し、竣工後の住宅管理や万が一の場合の紛争処理に備え、引き渡し後の住宅の維持管理をも視野に入れている点は従来の施工請負契約にはなかったものです。

 「細則」は約款各条項の実施にともなう具体的な内容および方法を規定し、契約の遂行はこの細則によって行われます。従来の契約では、当事者間の権利義務関係について具体的に明記することはなかったのですが、それを明確にすることによって、契約変更および契約違反の原因、責任所在が明らかになり、無用の誤解を招かずに問題の解決に当たることができます。なお、「細則」はあらかじめ用意された書式に基づき契約当事者が個々の事情を踏まえ作成できるようになっています。

 今のところ「イエンゴ施工請負契約書」の頒布は、当会に直接申し込まれた人に限られていますが、近い将来、施工請負契約の一つの定型として広く普及させることを目指しています。



あるべき契約のあり方

現在一般的に行われている施工請負契約と私たちが目標とする望ましい契約を比較した家づくりのフローを参考にしながら、私たちの契約サポート事業の概要について説明します(図3)。

表の下段、「従来の施工請負契約」と表記されているフローは、現在とくに中小施工業者の間で一般的に行われている施工請負契約の流れです。上段のフローは私たちが推進を目指している望ましい施工請負契約と契約サポート事業の流れを整理したものです。

1.契約前に家づくりの条件をすべてクリアにする
現在一般的に行われている請負契約で、もっとも問題になっているのは設計、仕様を詰めない時点で施工請負契約が結ばれていることです。原因としては、契約を急ぐ施工業者の事情がありますが、一日も早く契約を決めすぐにでも家を建てたいと焦る施主側の思惑も働いていることは否めません。

本来、施工請負契約は実施設計図が決まり、これに付帯する詳細仕様および施工費用の確定が前提になります。つまり、買うものの内容と費用が決まらなければ、それを買うという約束はできないという、ごく当たり前のことです。簡単な平面図と立面図、概要仕様だけでは正確な施工費はもちろん、家の完成すら予想できません。したがって、工事が進むにしたがい施主と施工業者間の思惑違いは大きくなり、予算の修正、あるいは工事の変更といった事態を招くことになります。契約後に詳細を詰める場合も同じで、施工費の見込み違いで起こるトラブルは後を絶ちません。

しかし、いったん契約を結んでしまうと、よほどの理由がない限り契約を解消することは難しく、仮に解約できたとしても、違約金や仕掛かり金の清算など経済的な損失ばかりでなく、工事を引き継ぐ業者探しなど、厄介なことが待ち受けています。

その上、素人の悲しさ、契約後は施主の立場が弱くなり、どうしても業者ペースになってしまいます。工事に注文をつければ施工費は追加され、それが怖くて注文も出せない、といった状況が生まれてきます。これでは納得のいく家づくりなど望むべくもありません。

このような轍を踏まないためには、契約を交わす前に家づくりのすべての条件を確定することです。具体的には、実施設計図面と最終的な仕様の決定、施工費用、工程と施工方法の確認、その他の契約約款の確認など、当事者間ですべてクリアにしてから契約書に署名捺印することです。


2.設計、施工分離契約のすすめ
施工業者が設計、仕様の詳細を詰めきらないうちに契約を急ぐ理由は、顧客を他社に奪われたくないという理由のほかに、設計、仕様を顧客の納得いくまで詰めようとすれば、かなりの時間と費用が必要であり、その負担に耐えられないという理由もあります。その上、詰めの作業の途中で顧客に逃げられた苦い経験があればなおさらで、とにかく契約を決めて安心したいという心理になるのもうなずけます。

施工会社の中には地盤調査や、設計を無料サービスと称し、顧客の関心を集めているところもありますが、良心的に施主が納得する家づくりを心がける施工業者であれば、こんないいかげんな約束はできないはずです。しょせん、無料サービスは質が悪くおざなりであり、また、ただゆえに責任もあいまいになります。とくに、家づくりの要となる設計は、検討を加えれば加えるほど質の高いものとなります。家づくりの成功もここにかかっているのです。誠実に考えれば設計の無料サービスなどありえない話です。

契約は当事者のいずれかに負担がかかるようだと、後日、問題の種を残すことになります。設計施工を一括契約している場合、往々にして、設計料を記載してない場合がありますが、これは単に見かけの契約であり、どこかでその費用を捻出していると考える方が自然です。ただ働きで設計をする建築家などどこにもいないからです。こうした契約は不透明、不明瞭になるばかりです。契約は透明でかつ明瞭であることが一番です。そのためには施工業者にとっても施主にとっても、無理なく納得のいく契約であることが必要です。

その点では、現在一般的に行われている設計・施工を包含した一括契約の方法には、家づくりの点からも契約行為の点からも多くの疑問があります。私たちは、施工請負契約における設計と施工の分離契約を提唱していますが、この方法であれば、家づくりに対する責任が明確になるばかりでなく、施主、施工業者双方にとってメリットがあります。 

施主は家づくりの方針や、設計の検討に時間をかけ、確信を持って契約に臨めます。また、施工業者は、設計企画に対する正当な対価を得られるばかりでなく、この期間を利用して施主との間に技術面、心理面での信頼関係を築くことができます。設計・施工の分離契約により、見かけの設計費用は若干増えるかもしれませんが、設計に対する責任が明確になり、契約当事者の意思疎通が計られるため、家づくりは円滑になると考えます。

本来、設計は施工の上位に位置付けられるものでしたが、ハウスメーカーの多くは事業の効率化という名の下に、設計、施工の一括受注をし、主要な利益を施工に求めるといった形が定着しています。そのため施工請負契約でも設計の位置付けはきわめてあいまいです。家づくりの肝心要 である設計に対する認識を高める上からも、施工請負契約における設計と施工の分離契約、分離発注はこれからの課題ではないでしょうか(分離契約に関する書式等については終章200頁参照)。

3.専門家による契約サポート
設計委託契約から施工請負契約にいたる条件整備の過程では、設計、仕様、見積もりチェック、施工監理、アフターケアなど専門的な知識と経験が要求されます。施主側の考えや希望を施工業者側にきちんと伝えるためにはどうしても専門的な知識をもった人の応援が必要です。もし、建築士など周囲に信頼できる専門家がいる場合には、その人に応援を頼んで打ち合わせの席に参加してもらうとよいでしょう。後々のことを考えると、お金に換算できないほどの利益をもたらしてくれるはずです。

私たちが行っている契約サポート活動は、周囲に信頼できる専門家がいない人たちを対象とした事業で、契約条件を詰めていく過程でお互いが誤解のないような設計、仕様の内容を確認するだけでなく、施工検査や竣工後の情報管理の問題、さらに総合的な施工保証保険までを含めた形で具体的に契約に反映させ、第三者的な立場から契約サポートを行っていくことを目指しています。

こうした施工契約のあり方はこれまでになく、施主、施工業者とも戸惑うところもあると思います。しかし、現在のようにずさんな契約が横行し、かつ契約にともなうトラブルが多発している状況では、業者主導の施工請負契約が限界にきていることも事実です。さらに、住宅の施工請負契約は法律文書だけの範囲で解決できる問題ではなく、建築にかかわる専門的な技術経験をともなう点、家づくりの専門技術者によるサポートが必要になってきます。これまでその受け皿となる機関がなかったことも反省すべき点です。

最近起こっている家づくりにかかわるトラブルの多くは、法廷で裁いても本質的な解決には至りません。トラブルを未然に防ぐことこそ、何よりも求められています。トラブルを未然に防ぐ第一歩は、適正な契約のもとに家づくりをはじめることです。

私たちが提案している契約サポート活動は、行政のような公の機関ではなじまず、また、営利事業として行うには客観性を欠き、第三者機能を果たすことは難しい面があります。幸い、1998年、わが国においてもNPO法が成立し、日本でもNPO法人による活動が認められるようになりました。終章で私たちのNPO法人について案内してありますが、NGO活動と並び、NPOは、今後の市民生活にとって重要なセーフティネットの役割を果たすものと期待されています。


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※実際の書籍の内容とは異なる場合があります。

 


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