ライフシートを作る
家族でアイデア会議
まず、一枚の紙を用意します。
同じ家族でも、それぞれ、趣味、嗜好、生活パターンが違います。そこで、家族全員で自由に希望や意見を出し合ってみましょう。たとえば、主寝室に並んだ書斎や趣味のためのプレイルームなどプラスアルファの部屋がほしい、リビングは吹き抜けやテラスなどで日当たりをよくしたい、必要な時すぐに取り出せる広い収納がほしい、調理や洗濯は明るい場所で楽しくしたい、光熱費があまりかからないようにしたい、地震に強い家にしたい……どんなことでもいいですから、いろいろな夢や希望をリストアップします。もし具体的な希望がなかなか浮かばなかったら、今住んでいるところの不便な点を挙げてみるといいでしょう。
ある程度希望が出てきたら、グループ分けし、整理して妥協できる部分、どうしてもこだわりたい部分などを決め、優先順位をつけていきます。
ライフプランニング(将来設計)
家族の生活を人生の時間軸に置き換えてみることをライフプランニングといいます。家族が年齢を重ねるにしたがって、家族構成や、生活スタイルが変化しますが、その変化をあらかじめ予測することによって、いつまでも住み心地のよい家をつくることができます。リストアップの作業に比べると、多少面倒な作業かもしれませんが、将来のリニューアルや増改築を考えた場合、大事な作業ですので、必ず行ってください。
また、現在の生活スタイルにとってはよい間取りであっても、数年後には合わなくなるということが出てきます。とくに、子供の成長、独立、分家などをどう考えるかで、将来増改築にかかる費用や老後の生活にも影響を与えます。住みづらくなったからといって、そのたびに家を住み替えていたのでは大変ですから、現在の必要にとらわれず、長期的な人生プランを予測することで、経済的な面でも生活の面でも大変有利に人生を送ることができます。ただし、あまり詳細に予測してしまうとかえってその予測に縛られてしまうので気をつけましょう(図6)。
以上二つの検討結果をまとめてライフシートができあがります。間取りプランも、このライフシートに基づいて描きますが、ライフシートは家づくりを進めていく上で、間取りプラン以外にも何度となく利用する機会が出てきます。家族の思いが詰まった貴重な情報ですから、設計等の各専門家と打ち合わせをする際にもライフシートを直接見せて相談に乗ってもらえば満足度はあがるはずです。これは、建売住宅を購入する場合も同じです。ライフシートと照らし合わせることで、自分の希望を確認でき、後悔しない家選びをすることができます。
設計の手順と方法
1.敷地スケッチ
敷地の状態を把握するために、周辺敷地の環境を参考図のような形でスケッチしてみましょう(図7)。スケッチに書き込む内容は、残しておきたい木、眺めのよい方向、入れやすい車庫の位置などです。隣の家の大きな窓なども見ておくべきです。もし、自分の家の窓が隣の家の窓と同じ位置にあって、カーテンを一日中閉めっぱなしなどということになっては、台なしですから。
2.ゾーニング
敷地も含めた全体像で計画します。敷地スケッチを見ながら車庫の位置や庭の取り方を決め、ライフシートをもとに必要な部屋をおおまかに配置する、これをゾーニングといいます(図8)。家の間取りをゾーン(空間)で分けるわけです。コツは方眼紙をつかったりして、あまりきっちりと考えないことです。あくまで、大まかに柔軟に考えて描きましょう。ゾーニングすることで、他の空間とのつながりが見えてきます。間取りをより具体的に描く前にゾーニングすれば、次の作業がまとめやすくなります。
3.間取りプランニングの準備
間取りプランニングに必要な材料は次のものです。
・形がわかる敷地図面
・半透明の紙(トレーシングペーパー)
・間取りを描く用紙
間取り用紙は市販されていますが、ここでは手作りの方法を紹介します。
一般的に木造住宅では910ミリが基準寸法になっています。これを910ミリモジュールといい、ドアや窓などの建材、キッチンやユニットバスなどの設備機器の大きさもすべて910モジュールをもとに規格されているので、まず図のような方眼紙を作ります(図9)。
実際に図面を引く前に調べておくことは、建蔽率、容積率です(一六七頁参照)。その他、斜線制限、採光斜線などいろいろな制限がありますが、それら細かな部分は専門家にまかせましょう。
4.家の配置と面積の確認
形のわかる敷地図を参照しながらトレーシングペーパーに敷地を描きます。この際、縮尺100分の1、つまり、敷地の大きさ1メートルを1センチに換算して描きます。
次に、その敷地が描いてあるトレーシングペーパーを間取り用紙に重ね、予想される家の形に間取り用紙の線上をなぞります(図10)。建蔽率から建築面積を計算して何コマ入るか見当をつけます。
これをもとにプランを進めていきましょう。
5.プランニング
ゾーニングしたものをもとに間取りをプランニングします。空間配置はすでにできていますから、あとは廊下や階段を入れて空間をつなげていきます(図11を参照)。
プランには定石や決まりごとはありません。自分が「したい生活」をイメージしながら、部屋の広さや関連づけを自由に考えてみてください。また、いろいろな家族の間取りを見てきている専門家に相談するのも、上手に間取りプランニングするコツです。
6.プランの確認
最終的に間取りができあがったら、その中で実際に暮らしているところをシミュレーションしてみましょう。玄関から各室への入り方、同じ時間帯に大人数が利用する部屋の大きさ、キッチンからゴミ置場までの動線など、不都合がないかどうか、もう一度家族全員で具体的にイメージして話し合ってみましょう。
自主設計を応援します
家の設計というのは、自分で設計をすればよいことはわかっていても、始めてみると意外に難しくて途中でギブアップしてしまう人が多いようです。住宅の設計は、深く考えれば考えるほど奥があり難しくなってきます。大学で建築を学んだ人でも、一人前に住宅の設計をできるようになるまでには長い経験が必要です。プロの設計事務所でも、経験の浅い設計者のプランを上級者がチェックし、修正を加え実施可能なプランに仕上げるといったプロセスは日常的に行われています。人間が安全にかつ快適に暮らすためには、単に見かけのデザインだけではなく、構造、動線、日照、コスト、安全、通風……など、さまざまな設計上の問題が横たわっています。いくら気に入った間取りプランでも、それらの基本的な条件を満たさなければ、快適に住むことはできません。
それでは、設計の知識や経験を持たない人が、自分でも納得できるようなプランを生み出すにはどうしたらいいのでしょうか。「家づくり援護会」では、「自分の家は自分で設計しよう!」のスローガンのもと、誰もが簡単に楽しく、しかも矛盾のない形で自分の家を設計できるように、自主設計を応援するための設計添削事業を行っています。夢を現実のものとすることを目的として、第一線の建築士が協力し、一般の人から寄せられた設計図面に添削、アドバイスをしながら一緒に設計作業を進めていくシステムです。詳しくは終章のガイダンスの中で紹介しますが、家づくりの手始めとして、まずチャレンジしてみてください。
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※実際の書籍の内容とは異なる場合があります。
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