落葉が舞いました。
蓄熱暖房器を運転するほどではありませんが、早く実験がしたくて2003年11月15日午前9時、床下換気口を閉鎖してスイッチを入れました。放熱量は6段階ある下から2番目のレベル2。
12時間後の同日21時、天候小雨、外気温14℃。断熱のない座敷の室温は16℃、新築の室温はなんと21℃!
しかもどの部屋にも温度差が感じられず、いかにも不思議な思いがしたので、念のため暖房器からいちばん遠い洗面所の室温を測定してみると19.5℃。小さな暖房器2台でこの温度環境です。本 格的な冬はこれからですが大成功の予感。
(1)背中があたたかい
それから歳の瀬にむけて何かと忙しく東京での生活が続き、冬季の住み心地をきちんとレヴューできたのはお正月休みでした。高齢者にとって本当に住みやすいのか体験の機会でもありました。
大晦日、紅白歌合戦も終わって居間に隣接した10畳の和室で家内と枕をならべました。
和室の床はリビングより30cm高くしてあります。一度腰掛けてから登り降りするようにしてあり、車椅子の座面ともレベルが近いので、このレベル差30cmは高齢者にとって負担の少ない段差です。
蓄熱暖房器が押入れ下のベタ基礎に設置してあるので、布団はホカフカホカフカです。これを敷き、心地よく寝付いてしばらくたった深夜。
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オッオッオッ
背中が奇妙にあたたかい! こんなあたたかさは初めて。ねっとりとすこし汗ばんでいます。風邪ひいちゃったのかな? でも家内も同じ感想です。毛布を外しました。
蓄熱暖房器の熱が、少し高くしてある和室の床下へ回って畳を暖めているようです。エアコン暖房のように空気が乾燥することもなく、ぬくぬくぬくぬくといい気持ち!
これはもう究極のローコスト床暖房。オンドルもかくやと思う心地よさ。大ヒット!
さあ温度環境を報告しましょう。
明けて2004年1月1日朝7時、晴れ、外気温はちょうど0℃。座敷は6℃。新築の室温16℃。この時、放熱量はレベル4でした。この16℃という室温、すこし寒いのではないかと思うでしょう。ところが体感温度はずいぶんあたたかいのです。
床の温度が室内空気の温度より1℃〜2℃あたたかいだけで、体感温度は3℃〜5℃あたたかく、この逆は3℃〜5℃寒く感じるというのは通説ですが、わたしはこんな話は床暖メーカーのチョウチン記事だと思っていました。でもこの説は本当ですね。
洗面所は15℃。やっぱりちょっと寒い。放熱レベルを5に上げました。
それから2月に向けて寒さが加わるにつれ放熱レベルを6にあげました。
2月のある土曜日、姪が3歳の娘をつれて名古屋から泊まりに来ました。正月に年始にきたのですがその時は日帰り。雰囲気と意匠に感動して帰ったのですが、どうしても泊まってみたいとまたやってきたのです。
翌朝、たまたま東京から帰宅していた犬山市のマンションへ、姪から電話が入りました。
「すごく気持ちのいいあたたかさ。ほんとうに感動しちゃった。どうなっているのか教えてほしい。山之上は寒いのではじめ毛布を使ったけど夜中に外しちゃった」
さあ大変、すっかり有頂天。
いままでは自己満足と家内の評価だけでしたが、どういう仕掛けかまったく知らない姪が電話をかけて訊きたくなるほど感心してくれたのです。
床があたたかいということは、あたたかさの質まで変えるようですね。
断熱住宅のもうひとつの利点は、外気温がせわしく変化するのに室温の変化が緩慢で小さいことです。結局、この冬の室温は16℃〜21℃の範囲で推移しました。
冬は1日のうちで寒暖の差がもっとも大きくなる季節です。晴天の朝は−5℃、お昼の最高気温15℃、寒暖差20℃というレベルは珍しいことではありません。この大きな変化が、高齢者の肉体におよぼす負担は軽視できないと思います。
おだやかな温度環境が実現できましたが、これは比較的温暖な美濃加茂市における事例です。東北や北海道では通用しない手法でしょう。
(2)結露ゼロ!
もうひとつのレヴューは結露です。
結露がもたらす害は家と人体へ広範囲におよびます。カビ、ダニ、腐朽 →アレルギー、ゼンソク、頭痛、鬱病。家の寿命を縮めます。悪影響はVOCと双璧。
結露は発生してからの対策も容易ではありません。結露には生活のありかたもかかわっているし、どこかに断熱欠損があればそこで結露します。原因がいくつもあって複雑怪奇。
一方、結露のメカニズムは単純です。暖気は冷気くらべて水蒸気を多く含むので、暖気が寒い部屋へ移動すると、冷やされて水蒸気を含みきれなくなり水に変わる(結露する)のです。
冬に北面の窓ガラスが結露するのはその最も分かりやすい例ですが、問題はその量。多いときには一日で窓ガラス1枚がコップ1杯くらいの結露を発生します。
窓ガラスは見えるからまだよいのですが、本当に深刻なのは見えない壁の中。これを内部結露といいます。乾きにくいグラスウールはじっとりと水を含み、知らないうちに腐朽がすすみ、カビどころかキノコまで生えてきます。北海道のナミダダケ事件がこれ。住宅は2年で腐りました。
いちばん気になるのはバスルームの窓。
おっ!
カラッと乾いています。それからキッチン、トイレ、洗面所と水廻りの窓をチェックしてまわりましたがすべて合格。
夜半に結露がおき、朝に乾いていることもあるので伝い水の痕跡も観察しましたが、これもなく、まずは完璧といえるでしょう。でも湿度100%近いバスルームの窓にも結露がなかったのは???で、その後も何度か確認したのですが、やはり結露はありません。換気ファンをこまめに操作していることと、断熱性能が高いことが大きいと思います。完璧と報告しておきます。
なぜ結露ゼロの住宅が出来たのか。要点を4項目あげておきましょう。
@ 断熱がしっかり施工されていて断熱欠損がない。断熱サッシの性能も抜群。
A こまぎれの部屋がなく、部屋間の温度差が少ない。
B 内装がすべて自然素材で、家自身が調湿している。特にシラス壁の調湿機能は抜群。
C 湿度センサー付喚気ファンが効いている。
真冬でも結露ゼロの住宅ができたということは、第一に健康的な空気環境のもとで暮らせること、第二に長寿命の住宅で長く安心して暮らせることを示しています。
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