(1)床材ラオス松
床材ラオス松の白身(大工さんは白太という)が日を重ねるにつれアメ色に変わり、赤身との差が目立たなくなりました。艶やかさに加えてしっとりと落ちつき、早くも無垢材の佳さが顕われてきました。経年変化で味わいが増していくのが無垢材のよいところ。
ラオス松はほんとうに素晴らしい床材です。巾1ミリ〜3ミリ前後の年輪は稠密で通直。針葉樹は一般にやわらかくて傷や凹みがつきやすく、床材には不向きですがラオス松にはこの欠点がありません。年輪が狭くて硬いので傷がつきにくい一方、ナラやカバほど硬くなく、感触もやさしい。また色目が一様でなく赤身の色に変化がありこの赤色がまた美しく、見た感じもとてもやわらかくおとなしい。
伐採禁止で輸入もできなくなったようですが、こんな柾目のとれる樹を想像してみてください。おそらく直径1m前後、樹齢200年〜300年、樹高25m〜35mの通直な樹木でしょう。
(2)樋から雨漏り!
話は前後します。8月7日午後5時頃、雷雨がきて叩きつけるような激しい降雨。このとき南側の軒樋があふれ、滝のように水が落ちて庭土を洗いました。樋はついこの間点検して枯葉を取り除いたばかりです。念のため、屋根面積が広く降雨量も多い北側屋根の樋を確認すると,ちゃんと排水しています。
南側の樋は2階屋根からの樋を受けていて、この吐き出し水が流れを阻害して行き場をふさがれた水があふれるようでした。
雨樋の基準は考えたこともありませんが、どんな大雨でもあふれないというわけにはいかないと思います。でも北側は正常なので南はやっぱり不具合。愛和へ連絡しました。
翌日、早速監督の板頭さんが飛んできました。お盆前の忙しい時期に思いもかけない素早い対応です。水上からジョーロで水を流し、監督とふたりで状況確認。わたしの観察が当たっていたようです。
「勾配もすこしゆるいようです。近日中に手直しします」
工務店の誠実さは、工事中もさることながら完成後の対応で決まるともいえます。終わってしまった工事に手間暇かけるのは不経済と割り切れないこともないのに,ひと言いえば忙しい中でもすぐ駆けつけてくれるうれしさ。
まじめにやっても物作りにはある確率で不良が出ます。これを減らす努力が重要なことはいうまでもありませんが、チョンボが出たときの対応はもっと大切で、すぐに対応してもらうと建て主もチョンボを忘れてうれしくなるから不思議。
(3)電気料金
里山の小さな家はオール電化を採用しました。コスト対策と老母の安全のためです。足腰が弱り、キッチンに寄りかかるのでガスの炎で袖口を焦がしたことが何度もありました。石油ストーブも気密性が高いので炭酸ガス中毒のリスクがあります。独居老人ですから油断できません。それに灯油の手配や補給も老人には負担です。
中部電力がオール電化に深夜電力をプラスしたEプランという割安な商品を販売していたのでこれを契約し、エコキュートという省エネタイプの給湯システムを採用しました。
通常、家庭のエネルギー源は電気とガス。冬は灯油が加わり3種類になります。これを電気一種類にすることで基本料金も1種類になり、光熱費は安くなるはずですが、問題は実績です。
結果を月々の電気料金で紹介しましょう。
月 |
11 |
12 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
平均 |
円 |
9,190 |
14,842 |
12,152 |
10,676 |
13,463 |
8,228 |
4,786 |
4,972 |
5,492 |
5,531 |
8,933 |
註:2月は蓄熱暖房機のトラブルで7日間使用せず。
暖房が要らなくなった5月からの電気料金が急に安くなって月額平均5,200円。これが生活のベースになる電力。冬季の電気暖房機運転費用は月額ほぼ8,000円。
まだ丸々1年間のデータがありませんが、10月末まで暖房は要らないので5月〜10月の6ヶ月の電気代は5,200/月。ここから年間平均の月額電気代は8,500円程度と推定できます。ただし、いまは老母の一人暮らしなので消費量も少ない。普通の家庭ではもう少しかかると思いますが、それでも相当安いといえるでしょう。
局所暖房の灯油やエアコンにくらべ、家の中がどこでもほぼ同じ温度で、空気が汚れない、水蒸気の発生がない、結露ゼロ、安全といった点を勘案すると、とりわけ年金生活のリタイア後にはメリットが大きいと思います。
(4)ショック! 畳に青カビ
9月14日、和室の畳にカビが生えたと電話が家内から入りました。見つけたのは妹で、たまたま母親の様子を見に訪れた際のこと。
ショックですが東京にいる身ではどうしようもなく、天気の良い日は窓を開けるよう母親に電話してお彼岸の3連休を待ちました。足腰が弱り、こまめに建具の開け閉めができないのです。
9月19日(日)、早速駆けつけるとすべての畳に満遍なく青カビが発生していました。飲み物をこぼした痕などの生えかたではなく、カビが生える条件が揃ってしまった。
マスクをかけ、掃除機で表面を吸い取り、タオルでカラ拭きしました。ねっとりと菌が粘りつきます。ついで水拭き、しばらく乾燥してから用意した消毒用アルコールで丁寧に拭いました。手触りはサラッと乾いた感じで一応表面のカビは退治できましたが、匂いは拭いきれません。床下へ潜って土台や根太の様子を観察しましたがこちらはカビの発生も異臭も無くひと安心。
ショック。しばらく呆然。
原因は思い当たります。2004年は10月20日現在台風の上陸個数が観測史上最高の10個。次から次に天気予報にでてくるのでお盆からロフトの窓を閉じておきました。換気用なので高いところに有り、母親は操作できません。突き出し外開き式ですから開放しておいても少々の雨は入らないので台風さえなければ開け放しで構わないのですが、接近した場合、東京から駆けつける訳にはいかないので夏のあいだ閉めておくしかありませんでした。連続真夏日や累計真夏日も各地で観測史上最高を記録したこの夏、高温に加えて湿度も高く、床下換気口から絶えず湿気が流入し、ロフトの湿度センサー付ファンだけでは排気が不十分だったのでしょう。
加えて新しいコンクリートの水分があります。コンクリートは水で固まり、水で強度を保ちます。特に新しいうちは水の塊。
和室の床は一般床面より30センチ上げたので基礎面からの高さは70センチあります。床下換気口の数も基準法以上の13個。通風にはかなり気を遣ったのに・・・・。
もちろん愛和に非はありません。
床下湿気の問題は日本では永遠の課題で、この解決のために様々な工法や対策がとられ、様々な意見があり、様々な器具が売られています。
注目されているのは土間床工法。基礎と床のあいだに隙間を設けず換気口もなし。床下を密閉してしまうというものです。この工法の論拠は、床下換気口は湿気を呼び込むだけで何の役にも立たないとの説に基づいています。
土間床工法は設計段階で検討しましたが取りやめました。床材と基礎の間にある土台や根太は密閉され、基礎コンクリートは多量の水分を含んでいるので木が影響を受けないわけがないと考えたからです。それに万一腐朽した場合、点検もできないし取りかえもきわめて困難でしょう。
青カビの原因はたぶんひとつではないと思います。基礎コンクリートが徐々に乾燥するのを待つとか、天気の良い日はこまめに窓を開けるとしても、いまのところ決め手の解はないようです。
ショック。迷い。
床下換気口を開けた場合と閉じた場合で果たして湿度がどの程度ちがうのか。閉じたほうが乾燥しているというのが定説になりつつあります。温度変化が小さいので過飽和の機会が少ないからでしょう。でも新築三年間くらいは開放してコンクリートの水分を抜くのがセオリー。ではその後はどうか。いつも閉鎖しておいて構わないのかといえばこれも不安。たぶん夏と冬は閉じ、春と秋に解放するのがベターでしょう。
迷いますねえ。
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